今日2024年1月26日、一般社団法人日本レコード協会ホームページにてオーディオレコード・アナログディスクの2023年12月度生産実績と共に2023年度通年のデータが公表されました。詳細を見ていきましょう。
オーディオレコード・アナログディスク 2014~2023年度データ(通年)
(一般社団法人 日本レコード協会|生産実績 過去10年間 オーディオレコード アナログディスクより)
数字だけで見るよりもグラフで見た方がここ10年のアナログレコード生産実績の全体的な推移やここ数年の生産枚数・生産金額の増加の勢いが分りやすいです。
2014~2017年まで生産枚数・生産金額共に毎年少しずつ増加し(2014年、2015年も前年比で高い伸び率を記録していたが、そもそもの生産枚数・生産金額が多くなっている為、パーセンテージ的には同じような数値でも増加数量的にはここ数年の方が大きい)、そこから2020年まで生産枚数としては110万枚前後~120万枚強を行ったり来たり、生産金額としては19億円~21億円辺りで推移していたアナログレコードですが、2021年度に生産枚数が前年比174%の伸び(邦盤に関しては、前年度比191%)を見せて以降、3年連続で明確な右肩上がりの推移を見せる結果となりました。
生産枚数前年比の値(%)と生産金額前年比の値(%)の乖離
2021年度、2022年度と同様に前年比で高い伸びを見せた国内アナログレコード生産枚数と生産金額ですが、気になるのは例年に比べ生産枚数の前年比伸び率(%)と生産金額の前年比伸び率(%)の間に若干大きめの乖離がある点です。
下記は、各年度アナログレコードの生産枚数と生産金額の詳細データになります。
(上記2枚共に一般社団法人 日本レコード協会|生産実績 過去10年間 オーディオレコード アナログディスクより)
さて、ここで簡単な算数の問題を解いてみる事にしましょう。
もし、あなたがMARCHのような大学を卒業していなかったとしても心配は必要ありません。簡単な引き算が出来れば大丈夫です。
各年度ごとの”合計生産金額の前年比パーセンテージの値”から”合計生産枚数(数量)の前年比パーセンテージの値”を引いてみてください(2014年度なら、166(%) – 149(%) 、2015年度なら、173(%) – 165(%) と言った具合です)。
すると、各年度の”合計生産金額の前年比パーセンテージの値”から”合計生産枚数(数量)の前年比パーセンテージの値”を引いた値は下記のようになります。
年度 | 乖離値(生産金額前年比% – 生産枚数前年比%) |
---|---|
2014 | 166 – 149 = 17 |
2015 | 173 – 165 = 8 |
2016 | 124 – 121 = 3 |
2017 | 132 – 133 = -1 |
2018 | 108 – 105 = 3 |
2019 | 103 – 109 = -6 |
2020 | 99 – 90 = 9 |
2021 | 184 – 174 = 10 |
2022 | 111 – 112 = -1 |
2023 | 145 – 126 = 19 |
上記表を見て分るように、(2014年は例外として)通常,この”生産金額前年比(%) から生産枚数前年比(%)を引いた値は、-6(2019年)から10(2021年)の間で推移しています。
ところが、2023年度ではこの値が19ポイントと大きくなっています。特に邦盤が24ポイント(155 – 131)の乖離となっていて、邦盤の影響が大きい事が分ります。
さて、これは何を意味しているのでしょうか?
「生産枚数の増加割合に対して生産金額の増加割合が例年より大きくなっている」と言う事は、このデータが集計ミスでない限り単純に「アナログレコード1枚当たりの生産コストが上がった」と、言う事ではないでしょうか。
2021年の通年データを見た際もアナログレコードの原材料である塩化ビニル樹脂の企業物価指数の上昇については触れていましたが、つまるところキーワードは「原油価格の上昇」です。