AKAI MPCを使用しビートメイクする場合(でも、その他機材やDAWでビートメイクする場合でも)、「(ドラムやベースなど)音の抜き差しを行い1曲の中に展開をつける」と言うのは多用される手法である。
そして、スタンドアローン型のMPCを使用している場合でも、DAWソフトもしくはMTRを同時に所有している場合「AKAI MPC上で全シークエンスパターンを作成(ミュートのON/OFFなどをAKAI MPC上で完結)」するのか「DAW・MTRに音源を録音してから、DAW・MTR上でオートメーションを書く」のかを選択する事が出来る。
結論から言えば、どちらの方法でも同じようにビートメイクを行う事は可能である。すでに自分なりのパターンがある人なら、その方法でビートメイクを行えば良いかと思うが、そうでない場合AKAI MPCを使用したビートメイクでは果たしてどちらの手法が良いのだろうか?
AKAI MPC上で全シークエンスパターンを作成し、ビートメイクする場合
まず、AKAI MPC上で全展開パターンのシークエンスを作成し、Song機能を使いシークエンスを組んでいく場合はどうなるのだろう?
ビートメイクの手順
AKAI MPC上で全展開パターンのシークエンスを作成し、ビートメイクする場合の手順としては
- 元となる(大体の)基本シークエンスを作成
- 空きSeqに元となるシークエンスをコピー
- コピーしたシークエンスで細かい設定(ミュートON/OFFなど)を行い、別パターンのシークエンスを作成
- 展開させるパターンの数だけ3.を繰り返し行い、シークエンスを複数作成する
- Songで曲の展開に合わせシークエンスを組む
- (必要に応じて)DAWもしくはMTRでSongを録音
と、言ったようになるかと思う。
最初から、元となる基本シークエンスに各展開のシークエンスパターンで使用するトラックを打ち込んでおいても良いし、基本シークエンスをコピーし新規にシークエンスを作成する際に新たにトラックを追加しても問題は無い。そこは各々の自由となる。
メリット
AKAI MPC上で全展開パターンのシークエンスを作成し、ビートメイクする場合のメリットとしては、
- ライブ感覚で様々な音の構築パターンを確認出来る
と、言った点が挙げられる。
DAWソフトやMTR上でももちろん、楽曲を再生しながらの音の抜き差しは行えるが、AKAI MPCでは「TRACK MUTE機能」を使用すればパッド操作1つで各トラックのミュートON/OFFを管理でき、様々な音の構築パターンを短時間で試す事が可能となる。
デメリット
AKAI MPC上で全展開パターンのシークエンスを作成し、ビートメイクする場合のデメリットとしては、
- 全シークエンスパターンを作成するのに時間がかかる
- Song作成の時間がかかる
と、言った点が挙げられる。
やはり、全シークエンスパターンを作成するのに時間がかかる。当然、展開のパターンが多くなればなるほど作成しなければならないシークエンスも増えて行く。
シークエンスの中で「1箇所だけベースドラムが抜けている、1箇所だけスネアが抜けている」と言ったような場合でも別シークエンスとなり、細かい設定にも意外と時間がかかってしまう。慣れている人ならば効率良くビートメイクを進められるのかもしれないが、慣れない内は苦戦するかもしれない。
また、「全パターンのシークエンス作成」よりは時間がかからない場合が多いかと思うが、シークエンス作成後のSong作成でも多少時間がかかってくる。こちらも、慣れない内は苦戦するかもしれない。
シークエンスを録音後、DAW・MTR上でオートメーションを書く場合
一方、AKAI MPC上で作成したシークエンスをDAWに録音し、DAW上でオートメーションを書いて曲を作成していく場合はどうなるだろう?
ビートメイクの手順
AKAI MPC上で作成したシークエンスをDAWに録音し、DAW上でオートメーションを書いて曲を作成していく場合の手順としては、
1.AKAI MPCから元となるシークエンス1つを
- パラアウト接続で複数トラックを同時録音
- 各素材ごと別々に録音した後にDAW上で波形を合わせる(あらかじめAKAI MPC側でクリック音を入れるなどして)
上記のいずれかの方法でDAW上に録音し、
2.DAW上で各素材(トラック)ごとにオートメーションを書く
と、言ったようになるかと思う。(AKAI MPCでクリック音を出すには、メイン画面で設定する必要がある。詳しくは、【AKAI MPC】メイン画面の基本的な見方・使用方法参照。)
メリット
AKAI MPC上で作成したシークエンスをDAWに録音し、DAW上でオートメーションを書いて曲を作成する場合のメリットとしては、
- 操作性が良い
- 融通が利く、自由度が高い
- 全体像がつかみやすい
と、言った点が挙げられる。
まず、DAW上では「後からいくらでも、広範囲をまとめて」オートメーションを書く・変更する事が可能なので、MPC上でSLIDER機能を使用してオートメーションを設定する場合に比べて操作性が良く、融通も利く。また、自由度も高い。
また、DAWソフト上で曲全体(のトラック)を見渡す事が出来る為「どのタイミングでどの素材に何のオートメーションを書いているか」が把握しやすく「全体の構成(展開)を考えやすい」かと思う。
デメリット
AKAI MPC上で作成したシークエンスをDAWに録音し、DAW上でオートメーションを書いて曲を作成する場合のデメリットとしては、
- (パラアウトで録音する場合)ある程度のオーディオインターフェイスの入力(in)数、またはMTRの入力ch(チャンネル)が必要になる
- (テイクを分けて録音する場合)DAW・MTR上でタイミングを合わせる必要がある
と、言った点が挙げられる。
AKAI MPCからの出音をパラアウトでDAWに録音していく場合、複数のトラックを同時録音できるが、その代わりオーディオインターフェイスの入力(in)数がある程度無ければ同時録音出来ない。そして、入力数が多くなれば価格も高くなる。
また、MTRへ録音する場合も同様にMTR側の入力数がある程度必要になってくる。
また、パラアウトではなくテイクを分けて録音する場合は録音後にDAW・MTR上で各トラックのタイミングを合わせなければならない。各トラック・各素材のアタックに合わせて揃えて行く方法もあれば、AKAI MPC側でシークエンス再生前にクリック音を出しておき、後からそのクリック音にタイミングを合わせる方法もある。
MTRに比べ、DAWソフト上の方が比較的楽にタイミングは合わせるかと思うが、慣れない内は苦戦するかもしれない。
両方の併用も可能
先に挙げた2通りの方法どちらかだけを使用しビートメイクする事も可能だが、両方の方法を併用する事ももちろん可能である。
その辺りは、各々が行いやすい方法でビートメイクを行えば良いかと思う。